「さっきよりレベルが上がってる!」
とはいえ今の俺にとっては誤差範囲内だ。そう判断した俺は、さきほどと同じように、距離を詰める。そしてミスリルの剣を構え、必勝の連携コンボを叩きこむ。
【豪力】【阿修羅】《サンダー》
先ほどと同じバックステップ狩り、しかし。
「…………」
「かわされた⁉」
レベル100の時とは違い、後ろへの飛び退きが浅くなっている。回避後の隙が少なくなっているだけでなく、すでにこちらの剣の間合いを見切られているということだ。
「こっちの手の内を、学習してるってわけか」
【破壊光線】
パアン!
《サンダー》に加え、コンボにさらにもう一発、追撃を加える。直撃を受けたアランは再び霧散した。しかし。
「今ので、【破壊光線】もバレたな……」
これは本格的にまずいことになってきた。相手は倒すたびにレベルアップする上に、こちらがカードを切るたびに、少しずつ手の内をバラされていく。繰り返されるごとに、有効な攻撃手段が減っていくということだ。もしこれが無限に続けば、間違いなくジリ貧になる。この罠、思っていたよりも、めちゃくちゃ厄介だ。
「ソラ、次がくる!」
ヴァージニアが叫ぶと同時に、今度はアランが『二体同時』に出現した。
「増えるのは聞いてないな……」
レベルは200、案の定さっきよりも上がっている。それが二体、いや、まだ増える。
「みゅ⁉ ネコイッパイ‼」
気づけば、俺たちは次々と出現するアランの軍団に、すっかり取り囲まれてしまっていた。ざっと見た限りで十五はいるだろうか。
「全員構えろ! 迎え撃つぞ!」
リュカの【獄炎焦熱】が花畑を焼き払い、フェリスの【絶対零度】がその灰を凍りつかせる。フウカの【疾風迅雷】が迫りくるアランを穿ち抜き、白鯨の姿に戻ったホエルが【天衣無縫】でアランたちをまとめて圧し潰す。しかしそのたびに、アランが増える。増える。どんどん増える。気づけばアランのレベルは1000に達し、俺たちの攻撃はそのほとんどを難なくかわされるようになってきていた。この調子で相手のレベルが上がり続け、手の内を読まれ続け、増え続けられたら、間違いなく詰む。