振り抜いた剣の切っ先から、追撃の稲妻がほとばしる。今まさに回避行動中のアランに、これを避ける術は、ない。
パアン!
風船が弾けるような音とともに、あまりにもあっけなく。『剣神アラン』の姿は煤のような粒子となって消滅した。
「みゅ! ソラツヨイ!」
「……さすが」
仲間たちが俺に賛辞の言葉を投げかけるが、俺自身はどうにも納得できずにいた。
(これが本当にあの『剣神アラン』なのか……?)
貶めるような意図は断じてないが、あまりにも手ごたえがなさすぎる。彼と並び英雄として崇め奉られるヴァージニアと比べても、やはり伝説に語られるような存在とは思えない。
「いまのは……じいちゃんニャのか?」
呆然としたまま一歩も動けずにいたシュリが、そう尋ねる。答えたのはヴァージニアだ。
「ああ、しかし正確には君の知るアランではないだろう。私の知るアランでもないがね」
ヴァージニアは俺と同様に、今しがた俺が倒したアランに疑いの目を向けている。このままで終わるはずがない。なにより、この月下に花畑が広がる世界を脱出できていないことが、それを証明している。
「やりましたわお兄様! かの伝説の剣神もお兄様と比べればたいしたことありませんでしたわね。これは思ったよりも早くソラリオンに帰れそうですわ。わたくし、帰ったらエイガ館のオールナイトで『錬金術師VSサメ2』をヘビロテいたしますの」
なんだろう、猛烈に嫌な予感がしてきた。フウカのセリフを聞いて、生きて帰れる気が微塵もしない。誕生日のお子様ランチでも、そこまで旗立てないと思う。
「いまのやつ、臭いがしなかった。だが誰かに見られている気配は、まだ感じる」
「フェリス、縁起でもないこと言うなよ……」
俺が言うが早いか、俺たちの視線の先で白い花弁が渦を巻き、二体目のアランが出現した。やはり、そう簡単にはいかないみたいだ。俺は念のため、再度《鑑定》を試みる。
《鑑定》
名前:アラン
年齢:
性別:
称号:
レベル:150