「そう……そっか。そうよね、ソラの言うとおりだわ」

 リュカはほっとしたような、それでいてなんだか少し物足りなさそうな顔をすると、自身の首についた〈誓約の首輪〉に手をかざした。それと同時に、リュカの身体が、巨大なドラゴンへと変貌する。

「これでいいかしら?」

「ギニャーッ! 食われるーッ!」

「食べないわよ、毒ありそうだもの」

「ネコに毒はないけど、なくても食べないでね」

 ネコ忍者たちは、しばらくわめき散らしていたが、何匹かは冷静さを取り戻したようだった。俺はそのうちの一匹に声をかける。

「とまあ、こういうわけだ。俺はたしかに人間だけど、君たち魔物をどうこうしようってわけじゃない。ただ、それだけの腕がありながら、どうして盗賊なんかやっているのか、気になるだけなんだ」

「ンニャム……、こんなものを見せられては、信じるしかニャいが……貴様らはいったい何(ニャニ)者だ?」

「ソラは……人と魔物が、ともに暮らす国の、王様……」

 ネコにそう語り掛けるサレンは、どこか誇らしげだ。

「人と魔物がともに⁉ そんなデタラメあるわけニャい……!」

 ドラゴン姿のリュカが、その大きな目でネコをじろりと睨みつける。

「……とも言い切れニャいか。わかった、貴様……いや、お前を信じよう。どのみちワレワレには選択肢が無(ニャ)さそうだ」

 敵愾心が薄れたことを確認すると、俺はネコたちをくるむ【聖女】の布をほどいてやった。もちろん、剣は預かっておくが。

「お前たちの目的はニャんだ? 食料を奪ったことへの復讐か?」

「こっちは大したものは奪われてないし、大きな被害も出てないから、今のところ責めるつもりはないよ。ただ今後も襲撃を続けるなら、俺たち以外の連中を怒らせることになるかもしれない。なにか事情があってのことなら、手を貸してもいいと思う」

 俺の話を真剣に聞いていたネコ忍者たちは、お互いに顔を見合わせると、静かにうなずき合った。

「……谷に、来てもらうのがよさそうだニャ」

 話はまとまった。俺たちはネコ族の忍者たちに連れられ、彼らの本拠地へと向かうことになった。ネコ族が住まう、剣(つるぎ)の谷へ。


*  *  *


 剣の谷への道のりは、深い森を抜け、険しい山岳地帯へと分け入る苛酷なものであった。