「ニャ、ニャんだこれは⁉」
対象を『守護する』聖なる布。それが【聖女】のスキルだ。本来は味方を守護するためのものだが、このスキルの元の持ち主である聖女マイは、その特性を逆手に取って拘束具として使っていた。
「フギャーッ! 体にまとわりついて離れニャいだとぉー⁉」
「ワレら誇り高きンニャット・プロルケン・ヴァッゾ・アララーニ族がこうも易々と手玉に取られるとはぁーッ!」
周囲を取り囲んでいたネコ忍者たちは、聖なる布によって一匹のこらず『おくるみ』にされた。俺自身、【聖女】を発動するのは初めてだが、上手くいったようだ。なんか名前的に使いづらいんだよな。いや【聖男】も意味わかんないけど。あきおじゃん。
「ふう、これでひとまず、無力化はできたかな」
「すごいわねソラ、あんな恐ろしい魔物相手に、微塵も臆さないなんて」
「ソラ、油断するなよ。毒を持っているかもしれないぞ」
悪魔の森勢には今後、ネコの良さを説いて回るとしよう。それがネコ派としての使命だ。俺はおくるみにされたネコ族の一匹を拾い上げる。
「フニャッ!」
「ざっとステータスを《鑑定》して回った限り、どうやらみんな、したっぱみたいだな」
「貴様ァ、ワレらを侮辱するかァ!」
布で優しくくるまれているように見えるが、スキルの発動さえも封じる【聖女】の拘束は絶対だ。引っかかれたり噛まれる心配はないだろう。
「手荒な真似はしたくない、断じて、絶対に。というわけで教えてくれ、お前たちのアジトはどこにある?」
「くっ、下衆め! ワガハイはたとえ体の自由を奪われようとも、心までは屈さぬ! ニンゲンごときが舐(ニャ)めるなよ! ひと思いに殺すがいい!」
なんかすぐ負ける女騎士みたいなこと言い始めた。本拠地に乗り込む前に、ある程度情報を引き出しておきたかったが。ここは致し方あるまい。奥の手を使うしかなさそうだ。
「こっちも荷馬車を襲われてるんでね。あまり手加減はできないぞ」
「どれほど辱めを受けようとも! ワガハイは屈したりしニャい!」
「やりにくいなあ」
俺はおくるみの隙間から、ネコの顎下に手をつっこんだ。
「よーしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし」
「フニャッ⁉ ハオォ……ハフ、ホッフ。ニャロロロロロロ……」
ネコ忍者の顔は、あっという間にトロけきった。こう見えて俺はかつて、ネコカフェに足しげく通っていたのだ。どこをどうすればネコが気持ちよくなるかなんて、手に取るようにわかる。
「話す気になった?」