「ソラ! 加勢するわ!」
「ご無事ですか、お兄様!」
「みゅ!」
馬車の荷台で待機していた仲間たちも、すぐさま飛び降りて臨戦態勢に移る。影の集団は俺たちを取り囲むように、ぐるりと大きな円を描いた。逃がすつもりはないようだ。
「ゴブリン……? いや、違うな」
背丈はたしかに悪魔の森でも見かけたゴブリンほどだが、全身に黒いボロ布をまとった姿は、すばしっこい身のこなしと合わせて、まるで忍者のようだ。俺は息を整えると、そのうちの一体を《鑑定》する。
名前:ミッケ
年齢:99
性別:オス
称号:ケット・シーのシノビ
レベル:30
【HP】190
【MP】170
【攻撃力】110
【防御力】60
【持久力】45
【精神力】50
【素早さ】200
【器用さ】35
【運】30
スキル:【剣術】【跳躍】
ステータスに表示されている種族名は『ケット・シー』――猫の獣人だ。
「なるほど、ネコか」
俺が呟くと、集団のひとりが、覆面を取りながら前に進み出た。
「それは違うぞ、ニンゲン。ワレワレはネコではニャい」
あらわになった大きな目、尖った耳、ふかふかの饅頭のような顔、そしてヒゲ。その顔は、どこからどう見てもネコそのものであった。
「いやネコだよ! ネコの忍者だよ!」
「否(イニャ)。誇り高き『ンニャット・プロルケン・ヴァッゾ・アララーニ族』だ」
「いやぜんぜん覚えられない! ネコ族だよ!」
なんというか、さきほどまで狩るか狩られるかといった命のやりとりをしていたにも関わらず、一気に戦意が削げ落ちてしまった。なにを隠そう、俺はネコ派だ。