リュカがフォローを入れてくれる。こと統治に関しては、リュカのほうが俺よりもずっとよくやってくれていると思うのだが。

「失敗したなら、見せしめにしたほうがいいんじゃないか」

「逆よフェリス。過剰な罰を与えると、次からはみんなが罰をおそれて失敗を隠すようになるの。許すべきところでは、許したほうが賢明なのよ」

「そういうものか。じゃあリュカが大事に取っていたジャーキーを、ミュウが食べてしまったことも許してやるんだな」

「それは聞いてないわよ! ミュウ!」

「みゅ ⁉」

 思わぬ流れ弾が。ミュウ、かわいそうに。いや自業自得か。

「しかし問題は盗賊への対処だな。ホクホクカブはまた作ればいいとして……」

「馬車六台のほうが痛手ですじゃ」

 市長の言う通りだ。ホクホクカブであれば生産は軌道に乗っているし、もし足りなくなったとしても俺がまた錬金術で栽培すればいい。しかし輸送手段は有限だ。自動車を量産することも考えたが、あれは今のところ俺しか作れない。燃料の〈雷水晶〉にしたって、エルダーリッチは難なく充電をこなしていたが、本来は相当なMPを消費するものだ。

 エルダーリッチが話に割って入る。

「食料を狙ったというのも不可解ではないかね。とくに野菜なんて、売りさばくにしても限度がある」

「そこなんだよな。金目のものとは言えない商材だもんなあ」

「でもお腹いっぱいになるよ~?」

 たしかにホエルの言う通り、まったく価値がないわけではない。しかし飢えを満たすために、リスクを冒してまで護送兵団を襲う野盗などいるのだろうか。

「少しよろしいでありましょうか。小官、気になったのでありますが」

 おずおずと手を挙げたのは、件の護衛隊長だ。実際に襲われた彼からならば、もう少し詳しい情報を聞き出せるかもしれない。

「聞かせてください」

「さきほどから伺っておりますと、どうも人間の野盗に限定して話をされているような気がするのでありますが……いえ、申し訳ございません、出過ぎたことを……」

 その話を聞いて合点がいった。いや盲点だったというべきか。徒党を組んで商隊を襲うのは、なにも人だけではない。

「そうか、魔物の盗賊か」

「はっ、覆面をしていたのでハッキリと確認したわけではありませんが、背格好や動きの機敏さからして『ゴブリンスカウト』のような……いえ、弓ではなく剣を振るっていたのが気になるところでありまして」

「ゴブリンが剣を?」