ソラリオンに戻った俺たちを待っていたのは、難しい顔をした市長と、ソラリオンの住人たちだった。


「おお、ソラどの。ご足労をおかけして申し訳ないですじゃ」

「お待たせしました。早速ですが、状況を教えていただけますか」

「もちろんですじゃ。本人から説明させたほうがよかろうと思いまして、待たせております」

 市長が目で合図をすると、人垣を割ってがたいの良い男が現れた。

 年季の入ったチェストプレートから、荷馬車隊の護衛隊長だということが一目でわかる。彼の顔は見ているこちらが滅入ってくるほど、陰気の沼に沈んでいた。

「誠に申し訳ございません、錬金王閣下。閣下より信を賜りお預かりしたエル=ポワレへの贈答品を、よりにもよって賊ごときにまんまと奪われるなど、閣下にお仕えする武官の身としてあるまじきこと……」

 護衛隊長は涙を流しそう言うやいなや、小さなナイフを取り出して己の首筋にあてがった。市長や周囲の住人たちが慌てて止めようとする。

「この期に及んでは、不肖ながら我が一命をもってお詫びとさせていただきたく! 何卒、小官の命ひとつにて、我が部下とその家族にだけは寛大なるご処置をお頼み申し上げる所存にて!」

「ちょちょ、ちょっと待って! まずは頭を上げてください」

「しかし閣下、王の信に背きたるは一族郎党まとめて死罪にて責を負うものと決まっております!」

「いや決めてない決めてない!」

 俺は護衛隊長の手から、すばやくナイフを取り上げた。なるほど、この人は元王国軍の兵士さんか。柄に王国のレリーフが掘られている。

「起っちゃったことは仕方ないです。それとここは王国ではないので、ソラリオンのやり方でいきましょう、ね」

「は、ははーっ。何卒、なにとぞぉ寛大なるご処置を賜りたく……」

 王国出身の兵士はみんな優秀なのだが、あの王都襲撃を体験しているだけに、俺を怖がるのは仕方ないことなのかもしれない。そこらへんも今後の課題として少しずつ改善していこう。まずは目の前のことからだ。

「責任の所在と対応については、状況を確認してから判断しましょう。まずは人的被害の状況を教えていただけますか」

「はっ。幸いにもぽーたぶる転移水晶が行きわたっておりましたので、隊の者はみな、五体満足で逃げおおせました。小官もこのように、生き恥をさらしている次第にて」