――ドガガガガガガガガガガ、ズバドドドドドドドドドドドドドドド!!


 あ、これダメなやつだ。直感的にそう思ったが、もう止まらない。火球の大軍は居並ぶ一〇体の的を木っ端みじんに粉砕し、それでもなおとどまるところを知らず、大地をえぐり、大気を震わせ、校庭に無数のクレーターを幾重にも築いた。真っ平らな校庭には、もはやちょっとした谷ができてしまった。

「あわ、あわわわわ……」

 卒倒しかけている少年を筆頭に、ギャラリーは総ドン引きである。

「すみません! すぐに直しますね!」

 俺は地面に手をかざし、すぐさまスキルを発動する。【天衣無縫】で飛び散った土砂を集め、谷を平地にする要領で慣らしていく。溶けてどろどろの溶岩になった土も、《分解》と《再構築》で元の常態に戻して……これでよしと。

「ご迷惑をおかけしました。なるべく元の形になるようにしてみたんですけど……」

 いや、的ってあんなに禍々しかったっけか。もっとこうのっぺりとした藁人形みたいなやつだった気がするけど。記憶を元に《構築》したはずなのに、なんだかトゲトゲしている。

「え、ええ、みんな無事ですわ……はい」

マリリン校長は完全に腰を抜かしていた。他の生徒たちもほとんど放心状態だ。それはそうだろう、重大インシデントもいいところだ。運転のみならず、魔法でも脇見・不注意はしないよう、改めて心がけよう。

「しかしこれじゃあ、的に当たったかどうかもわからないな……この勝負は俺の負けってことでいいかな」

「いやいやいやいや! 勝負になってねえって! あ、いや、なってませんよ! オレサマ……じゃなくて、オレ……ボクの負けでいいです! 負けさせてください!」

 件の少年には、ほとんど発狂したような声で、そんなことを言われてしまった。仕方ないから、ドローということにしておこう。なんだかんだで、お互いに禍根を残さないという意味では、一番いい落としどころに収まったのではなかろうか。


 その後、リュカとフェリスによる射的対決も行われた。スキルではなく、魔法を使ったエキシビジョンマッチといったところだ。問題はふたりが魔法を使いこなせるかという点だったが、そこはまったく心配するようなものではなかった。

「いくわよ、《ファイアボール》! ああ、なんでこんなに当てにくいの?」

「下手くそ。《アイスエッジ》、はい当たった」

 呑み込みが早いのか、それとも素質があるのか。リュカは火球を放つ《ファイアボール》を、フェリスは氷の刃を飛ばす《アイスエッジ》を難なく習得した。これでけでも大きな収穫だが、今度一緒にエルダーリッチから魔法を教わるのもいいかもしれない。