「ソラどのが、このジドウシャという魔法アイテムについて解説をしてくださるそうです」

 すると、またわあっと人が戻ってくる。それどころか、いったい今までどこに隠れていたんだというぐらい、大勢の人たちが集まってきた。フードを被っているのを見ると、やはりみな魔術師らしい。最近魔法を習い始めた俺が、魔術師にものを教えるというのは、正直言ってかなり緊張する。

「この自動車の動力には、モーターというものを使っています。これは《サンダー》で動くんです」

 俺はボンネットを開けて、モーターを空中で《分解》してみせた。

「この部分に《サンダー》を流すと……」

 俺はローターに微弱な《サンダー》を放った。ローターは、少しだけ回転する。

「なるほど!」

 と、ひとりの老魔術師が叫んだ。

「《サンダー》の発生に伴う磁力を利用しとるわけじゃな! やはりわしの研究は間違いではなかった! 予算が増えるぞ!」

 老魔術師は、人混みをかき分けて俺に近づいてくる。

「しかしこの構造じゃと《サンダー》を流すだけで、回転を続けることはできないわけじゃな。ソラどのはそこをどうやって……」

「ソラどの、この三つの水晶については……」

「素人質問で恐縮なのですが……」

 自動車に使ったあらゆる技術について、あらゆる人からどんどん質問が飛んでくる。そのすべてに答えているうちに、すっかり陽が傾いてしまった。

「さあみんな、ソラどのはお疲れです。今日はこの辺りに!」

 キーラさんの言葉で、みんなは名残惜しそうに帰って行った。

 俺はすっかり感心してしまった。

「みなさん、勉強熱心ですね」

「みんなやはり、魔法が好きですから」

 キーラさんの言葉は、どこか誇らしげだ。


 そうして俺たちは、公館の中を案内された。広いホールには、たくさんのガラスケースが並んでいる。

「これらは、かの大魔術師、ヴァージニア・エル=ポワレのゆかりの品々です」

 キーラさんは嬉しそうに解説を始めた。

「この羽根ペンは、ヴァージニア・エル=ポワレが魔道書を書く際に使用したものだと言われている、貴重な品です」