やっぱり、自らエル=ポワレに足を運んで良かった。まだまだソラリオンは発展の余地がある。
「俺は、この町から多くを学びたいです。また、こちらから提供できる技術もあると思います。ですからどうか、俺たちと同じ目線でいてください」
キーラさんは俺の手を取って、ゆっくりと立ち上がる。
「申し訳ない……私はあなたを誤解していたようです……」
キーラさんは言った。
「もし、ソラどのがお許しになるのであれば、ぜひこの町と提携を結んでいただきたい」
「最初から、そのつもりで来ました。でも、すみませんでした」
そう、キーラさんを怖がらせてしまった原因は、こちらにある。
「つい自動車でスピードを出しすぎてしまって……そちらの使者が到着するのを待つべきでしたし、アポイントメントを取るべきでした。失礼しました」
正直なところ、新しい世界を旅することが楽しくて、つい、気が急いてしまっていたのだ。俺はキーラさんに頭を下げた。
「とんでもない! それに……あのジドウシャなのですが、魔法で動いているということでしたね?」
キーラさんは怯えた表情から一変、頬を紅潮させ、目を輝かせている。
「どういう原理で動いているのか、もしよろしければご教授いただきたい。あんな魔法アイテムは、見たことがない」
「あれは《サンダー》で動いているんですよ。使っている魔法自体はシンプルなものなんです。せっかくですから、今から公館前に戻って、中をご覧になりますか?」
「ぜひぜひ!」
それから公館前に戻るまで、魔法談義に花が咲いた。
「エル=ポワレは、政治的に見ると非常に不安定な立地です。でも創始者がこの土地を選んだのは理由があります。それは、大気中の魔素の密度なんです」
それを聴くと、エルダーリッチは手のひらの上で緑色の炎を燃やした。
「確かに、ソラリオンの二十倍はある」
キーラさんは、また目を丸くした。
「あの、いま詠唱は……」
「私には不向きなんだ。舌が回らなくてね」
エルダーリッチは涼しげに答えたが、それがどれだけ凄いことなのかは、キーラさんの表情を見ればわかる。俺も、呪文みたいなものは教わっていない。それがエルダーリッチのスタイルなのだろう。
「魔素検出を無詠唱で……いったいあなたは……」
「まあ、只者とは言うまいよ」
そんな話をしているうちに、公館前に辿り着いた。多くの人が集まっていて、自動車をためつすがめつ眺めている。俺の姿を見ると彼らは逃げだそうとしたが、キーラさんがそれを制した。