これで筒状のネオジム磁石を造る。錆を防ぐために、亜鉛メッキも施しておく。

 ここからだ。

 フレミングの右手の法則、左手の法則、アラゴの円盤。一時期ニコラ・テスラに憧れていて、いろいろと調べたのだ。まさか役に立つ日が訪れようとは。

「次は何を造るつもりなのかね」

 エルダーリッチが、興味深げに尋ねてきた。

「交流モーターさ」

 仕組みは複雑だが、単純な直流モーターよりも却って堅牢なのだ。

 次に鉄のローターを造り、ネオジム磁石でできたステーターと共に、ホエルの【天衣無縫】で宙に浮かせる。次はローターに《サンダー》を流して動作テストだ。

 だがこれは、かなり高度な作業が要求される。

「エルダーリッチ、《サンダー》のための制御装置があったよな」

「ああ、これだね」

 彼女が取り出したのは、文庫本くらいの木箱だ。

「かなり難しい要求をするんだけど」

 俺は彼女の目を見て言った。

「今から雷水晶と俺と君とで、三発のサンダーを発動させる。制御装置を介して、それを1/60秒周期で小刻みに発射することはできるかな?」

「君の言う一ビョウというのは……確か8.263グラヴィだったな。それなら可能だ。私を舐めてもらっては困るよ」

 エルダーリッチが木箱に手のひらを当てると、淡い紫色に光った。

「準備完了だ」

「ありがとう。じゃあ、せーの、で行こう」

 せーの! 三つの電流が制御装置に注ぎ込まれ、そこから三相交流となった電流がローターを流れる。

 ――フィイイイイン

 風を切る、音。

「よっしゃ、回った! テスト成功だ!」

 サンダーが、パッと空中で弾けた。ローターは慣性で回り続けている。

「よし、動力はこれでバッチリだ!」

 俺たちがそんなことをしている間、馬車の横で問答が繰り広げられていた。

「結局、元の姿に戻った私に、乗っていくのがいちばん速いのよ」

 尻の痛みも治まってきて、リュカがそんなことを言った。

「お前の背中は鱗が硬すぎる。前に乗ったときも、乗り心地は馬車よりはマシ、くらいだった」