毛皮をなめすにも、特別な技術は要らない。《融解》で油脂を洗い落とし《酸化》で防腐を施せば、もう自由に使える。俺はこれで敷物を作った。石床に直接横になるより、ずっと快適になった。

こんなふうに魔物を狩ることも覚えたので、食料をレインボーフルーツだけに頼る必要もなくなっている。俺は干し肉をかじり、植物の茎から水をすすっていた。タンパク質も水分も摂れている。

しかし。この悪魔の森が危険極まる場所であることに変わりはない。レベルも上がり、Sランクのコカトリスくらいなら倒せるようになったが、問題はSSランクの魔物だ。コカトリスをひと噛みで葬ったバジリスクなど。あんな連中を相手にできるほど、俺はまだ強くない。

SSランクの魔物がそこら中に闊歩しているのがこの悪魔の森だ。探索範囲を大きく広げることは、未だ難しい。ある程度快適とはいえ、俺は悪魔の森の小さな一角でかろうじて生きているに過ぎない。

知らない魔物の泣き声が、洞窟の奥まで響いてくる夜。食事と睡眠が安全に取れるようになれば、次は人間らしい感情が顔を出してくる。



――孤独だ。



こればかりは、どうしようもなかった。なにせ、ここにいる生き物は、すべて食料か敵のどちらかなのだ。俺はひとりで戦い、ひとりで食べ、ひとりで眠る。

「………………」

言葉を交わせる相手もいない。

「孤独だ……」