「外の世界を、もっと知りたいし、仲間にも見せてやりたいんです」
俺たちは、悪魔の森と、ここソラリオンしか知らない。外の世界には、もっと見て回れるところがたくさんあるはずだ。
「もしよろしければ、市長。警官の増員と、保育士の募集をかけてください。住宅の整備も、一気に進めましょう」
「……うむ。わかりましたですじゃ。ソラリオンも、いつまでも皆様方におんぶにだっこではいけますまい」
市長は深く頷いて、俺の提案を承諾してくれた。
しばらく俺の心に眠らせていた、冒険心がめらめらと立ち上がってくるのがわかる。
――外の世界を、もっと知りたい!
思わず立ち上がった俺を、エルダーリッチは微笑ましい表情で眺める。
「その少年のような目は、嫌いじゃないよ」
そう言われると、ちょっとだけ恥ずかしい。
「私も、興味がないと言えば噓になる。使者の魔法はあの程度だったが、私が外の世界を離れてからずいぶん経っている。私の知らない魔法が、多く発見されているはずだ」
彼女は彼女で、旅を楽しみにしているらしい。
「何百年も研究を続けてきた君より、すごい魔術師がいるとは思えないけど」
「興味があるのは個人ではなく技術だよ、ソラ。あらゆる技術は、知性の交感を介して洗練される。そういった意味で私の魔法は、きっとアンバランスだ」
エルダーリッチも、ソファから立ち上がった。
「学びたまえ、もっと、もっと多くを。君はどこまでも強く、賢くなれる」
その言葉とともに見せたエルダーリッチの笑顔が、少し寂しそうに見えたのは、俺の気のせいだろうか。
* * *
さて、旅の準備をすることになった。
みんなで家に帰って、作戦会議。リビングに集合した。
「地図の写しを市長からもらってきた」
俺はリビングのテーブルに地図を広げた。
「その……この街」
「ソラリオンだな」
エルダーリッチがにやりと笑う。
「やっぱりこの名前、照れくさいよ」