「俺の名前をつけるってのは、ちょっと、アレなんじゃないかな」
「ソラ」
エルダーリッチは、まっすぐ俺の目を見た。
「君はもはや、一介の錬金術師ではない。自治領の統治者なのだよ。我々だけではなく、この町に集う多くの者たちが、君を主と慕っている。それを自覚したまえ」
そう言われると、返す言葉もない。
「それでは、首都の名前は『ソラリオン』で決定ですじゃ! 異論はございませんな?」
みんな、なんやかんやと言いながらも、頷き合っていて、結局首都の名前は『ソラリオン』ということで決まってしまった。
「やっぱり……さすがに照れるよこれは……」
「自覚が足りないからだよ。そこで胸を張れないのが、君の可愛いところでもあるのだけれどね」
立ち上がったエルダーリッチに、頭を指先でつつかれた。
「頑張りたまえ、ソラリオンの領主くん」
完全にからかわれている。
「では、首都名『ソラリオン』お披露目会の準備をば……」
そこで、ドアがノックされた。
「会議中、失礼します!」
役所の受付の人だ。
「いま、使者の方が」
「悪いが、今は会議中じゃ。ちょっと待ってもろうてくれんかの」
「それが『魔術師の町』からの使者でして……」
「なに!」
市長は手に持った黒板をぱたりと倒した。
「ソラどの! そして、そうじゃな、エルダーリッチどの! ぜひ使者との話し合いに立ち会っていただきたい!」
なにやら、おおごとらしい。
「『魔術師の町』ってのは、すごいところなんですか?」
「規模としては、今のソラリオンよりは小さな町ですじゃ、ただ……」
市長は立ち上がる。
「魔法研究によって、他の国から独立した地位を築いている、特別な町なのですじゃ。まさかそこから使者が来るとは……いや、この街の成長を考えると、時間の問題だったのかもしれんですな」
「魔法研究の町か、興味深い」
エルダーリッチも立ち上がる。俺も彼女の弟子になっているくらいだから、魔法にはもちろん興味がある。