レベルの上がった現在、俺の膂力は常人を大きく超えている。この弓の弦も、ここに来たばかりの俺には、たわませることさえできなかっただろう。矢の先端のミスリルには、猛毒茸を《融解》させて液化したものを塗ってある。少しでもかすれば、獲物を倒すことが可能だ。食べるときには《分解》を使って、無毒化させればいい。つくづく錬金術というのは便利なものだと思う。

俺はモモイノシシに向かって、矢を放った。ピュウッと風を切る音とともに、矢が木々の間をすり抜けて行く。矢じりが、ちょうど倒木をまたごうとしていた、モモイノシシの脇腹に命中した。



――プギュルッ!



身体を硬直させて、モモイノシシが転倒する。猛毒茸の即効性はさすがだ。俺は矢を抜いて、モモイノシシに《分解》を使い、無毒化させる。さすがにカゴには入らないので、俺は巨大なモモイノシシを肩に担いだ。目方300キロくらいはありそうだけれど、今の俺にとっては軽いものだ。

洞窟に帰ると、正体の分かっているモモイノシシに、あえて《鑑定》を使う。食べることができる肉に対して《鑑定》を使うと、部位をどのようにして切り分ければ良いかのラインが、緑色の光線で表示されるのだ。

俺はその光線に従って、ミスリルで造ったナイフで巨大な肉を捌いていく。バラ、ロース、カタ――そんなものまで表示される。つくづく錬金術は便利だ。