悪魔の森の大迷宮で俺たちに立ちはだかった、邪龍アジ・ダハーカ。あれはエルダーリッチの創った人工の魔物だった。つまりあいつが使った技は、エルダーリッチが技術として持っているわけだ。

「君の言うところの、れーざー彫刻か。実用化は難しいものではなかったよ」

 土産物屋にたまに置いてある、ガラスの中に模様が入っているアレだ。

「何百年も魔法研究を続けてきたが、発想力において、私はまだまだだな」

エルダーリッチは、涼しげな顔をしてそんなことを言っているけれど、俺のちょっとしたアイディアをすぐに魔法で実現するのは、グルーエルみたいな連中には真似できないことだと思う。

 こういう気持ちは、すぐに素直に伝えた方がいい。

「エルダーリッチ、君だからできたんだよ」

「弟子に褒められるのは、なんだか気恥ずかしいね」

 彼女は髪をかき上げて、彼女はソファから立ち上がる。そして市長の地図を見た。

「傘下に入りたいって、町がいくつか出てきているらしい」

 俺が地図の赤い丸を指さすと、彼女は頷いた。

「君が国王を倒したことによって、王国の影響力が薄れてきているのだろう。圧政から解放された民が、それぞれ独立した動きを始めているということだ」

 その言葉に、市長が深く頷く。

「あれから、この街を通る人たちの顔も、ずいぶんと明るくなったものですじゃ。ソラ様には感謝しかありませんわい」

「みんなの力あってのことですよ。人々の生活も、自治領の独立も」

 そこで、市長がぽんと手を叩いた。

「そうじゃった! ソラ様をお呼びした件をすっかり忘れておりましたわい。まさに、その自治領の件ですじゃ」

 市長はよっこらしょと、イスから立ち上がる。

「詳しくは会議室でお話ししますじゃ。みなさまにもご連絡しますわい」

 そうして、会議室に全員集合、ということになった。

 映画を観終えたフウカとサレン。

「やはり『錬金術師VSサメ』は素晴らしいエイガですわお兄様! 特撮技術を純粋に楽しむアトラクション的作品を毛嫌いするのは、人生の損失ですわ!」

「うん、面白かったよ。ソラ、今度一緒に観よ」

 警察署から普段着に着替えてきたリュカとフェリス。

「まさかほんとに氷漬けにしようとするだなんて! 死んじゃったらどうするのよ!」

「その辺に埋めておけばいい。ソラの法を破った連中に、慈悲など必要ない」

 保育園でひと仕事終えたホエルとミュウ。

「あれから旅芸人さんが来てね~子供たちに劇を見せてくれたんだよ~」