角を曲がったところには、もうずいぶんと大きくなった保育園がある。人口の増加に伴って、当然子供も増えるわけだ。
「あ~ソラだ~」
俺に気づいたホエルは、真正面から抱き着いてくる。フワフワしているように見えて、しっかり園長先生をやっているのだけれど、抱き癖は変わらない。
「みゅ!」
俺の相棒、ミラクルスライムのミュウも、子供たちの世話に一役買っているらしい。
「ね~ソラ~」
抱き着いてきたかと思ったら、ホエルは次に俺の膝裏に手を回して、抱き上げた。
「また~たかいたかいする~?」
「あー! ソラ様、お姫様になってるー!」
突然のお姫様抱っこに、子供たちがはやし立てる。
「たかいたかいは、勘弁してください。あと、降ろしてください」
「え~」
「ボクモ! ソラ! ダッコスル!」
小さなミュウがぽいんぽいんと跳ねる。
「……大きくなったらな」
「オオキク、ナル! ン~~~!」
ミュウは大きく息を吸い込んで、体をプゥッと風船のように膨らませた。器用なものだが、上に乗ろうものなら、割れてしまいそうだ。
ようやくホエルに地面に降ろしてもらうと、保育園の経営状況について、少しばかり話をした。
「う~ん、もう少し~、先生が~、多いと嬉しいな~」
「わかった、市長と相談してみるよ」
「ソラはえらいね~」
ホエルに頭を撫でられる。毎度のことだけれど、非常に照れくさい。
「ソラ、エライ!」
「ありがとよ」
保育園から出て、役所まではすぐ近くだ。市長は執務室にいた。机の上には、書類が山のように積まれている。
「これはこれは、ソラどの。もうそんな時間でしたかな」
ふう、と市長は袖でひたいを拭った。
「いやあ、人口増加が止まりませんな。また新しい住宅街を造る必要が出てきそうですわい。またお手すきの際にご相談したいですじゃ、えー、それと……」
市長は書類を机の隅にまとめて、地図を広げる。
「民の流入とは別に、町ごと傘下に入りたいというところが、いくつか出てきておりましてな。たとえばここ」