会議室を出て行くサレンは、陳情に来た人々の波に隠れてしまう。

「………………」

 なるほど、王様ってのは大変だ。


  *  *  *


 町役場の外に出ると、自分の顔がひどく熱くなっていることに気がついた。

 最初は、なんて馬鹿な奴だろうと思っていた。

 人間の少女に似た姿をしているとはいえ、頭には角が生えているのだ。

 それをソラは――。

「………………」 

 必要なのは甘い思いをすること。

 そのために他者を利用する。

 すべての生き物が、そうしているように。

 でも、ソラはそうじゃない。

 私はソラがくれた麦わら帽子を被り直した。

 そうして、薬指の赤い指輪を見つめる。

 日を浴びて、輝いている。

 これは、予想もしなかった結末だ。

 私が求めていたよりも、ずっと、ずっと――ソラという男は甘かった。

「サレンお姉ちゃん! ボール取って!」

 ソラの教えた遊びが、子供たちに広がっている。私はその丸いおもちゃを、子供たちに投げ返した。

「………………」

 甘い計算違いだ。

 それがいま、とても嬉しい。