その中心で、サレンはニコニコと笑っていた。

「ありがとう、ソラ」

 サレンは、相変わらず麦わら帽子を被っている。俺がちょっと手を加えて、角が飛び出すデザインにした。

「指輪も帽子も、大切にするね」

 そう、サレンはもうなにも隠す必要はないのだ。

「君と仲間になれて、本当に良かったよ」

「仲間?」

 サレンは小首を傾げた。

「夫婦じゃないの?」

 ――場が凍り付いた。

「………………」

 これから俺は国を統べる王として、争いを諫める力を身につければならないのだろう。

 でも今回は、ちょっと難しいかもしれない。

「ソラ!」

 リュカが柳眉を逆立て、

「ソラ」

 フェリスは静かに俺を見つめ、

「お兄さま!」

 フウカ、ぷんすか俺を見上げ、

「あらあら~」

 ホエルは微笑みながら両手を広げる。

「………………」

 俺はみんなにもみくちゃにされながら、王としての自覚を新たにする――のは、とりあえずこの場を治めてからだ。

 みんなで手足をひっぱられ、体を押しつけられ、押し倒されて、のしかかられて――。

「やれやれ、王というやつは大変だな。まあ、うまくやる術を身につけることだ」

 エルダーリッチは、イスに座って楽しげに俺たちを眺めている。

 うまくやる術、見つかるんだろうか。

 そこにまた、どやどやと人がやってくる。

「王様、ラメンの新しい具を開発したぜ!」

「商店が百貨店に入りきりません! 二号棟を作りましょう!」

「軍からの使いが来て、国の傘下に入りたいと!」

 ありがたいことに、やるべきことはいくらでもあるらしい。

「はい、おしまい! 町の人が来てるから!」

 みんなの体を押しのけて、俺は立ち上がった。

「さて! 順番に、お話を聞きましょう」

 俺がそう言うと、俺をめちゃくちゃにしていたみんなも、さっと自分の持ち場に戻る。

「ソラ」

 振り向く前に、サレンは俺の肩にツンとキスをした。首筋に、麦わら帽子のつばが当たった。

「じゃあ、あとでね」