鬱蒼と茂る森。恐ろしい魔物がのし歩き、猛毒の植物がはびこる。唯一の安息の場は、水の滴る暗い洞窟――悪魔の森はそんな場所だ。

しかし今では、そこそこ快適な生活が送れるようになってきた。

俺はベルトにミスリルの剣を差し、脇に弓を挟んだ。弓は丈夫な木を《分解》し、繊維を《構築》して作った丈夫なものだ。矢の先端にはミスリルを使っているから、撃てば必ず回収することにしている。

俺は背中に大きなカゴを背負って洞窟を出た。森のざわめきから感じ取れる情報量も増えてきて、どれが食料になり、どれが役に立たず、どれが敵になるのかを察知できるようになってきている。毎日MPを使い果たすまで《鑑定》を使い続けた結果だ。

遠くに、少し大きな足音。

俺は土に含まれるガラスと木から《構築》した、双眼鏡を覗き込んだ。

淡い赤色の体躯、あのノッシノッシとした歩き方――モモイノシシだ。

しめた。

モモイノシシは食材として優秀だし、毛皮も寝具や敷物として活用できる。俺は矢の射程距離まで、足音を立てないように気を付けながら、ゆっくりとモモイノシシの後を追った。

充分な距離まで近付くと、カゴの横に備えた矢筒から矢を取り、弓につがえて引き絞る。