今まで感じたことのない、すさまじい力だ。
私は両手を上に向けて、それを雲へと解き放った。
赤い光は流れ星のように尾を引きながら昇っていき、そして――。
――ドォオオオオオオオオオン!
巨大な爆発は雲を吹き飛ばして、町中を照らした。
「すごい力が湧いてくるよ、ソラ……どうなってるのかな?」
「……面白いものを見せてくれたじゃないか」
振り向くと、エルダーリッチがいた。
「ソラ、君は〈魔力核〉が“概念”であるという事実を理解したらしいな。つまり……」
明るい光を見上げながら、続ける。
「そもそも〈魔力核〉に“全体”などないのだ。〈魔力核〉がどんな形であれ、それを所持していると確信した者ひとりが、その力を行使できる。おまけに〈魔力核〉は〈誓約の首輪〉とシナジーがあるらしい。サレン」
エルダーリッチは、私を見て微笑んだ。
「今の君は、リュカたちにも負けないだけの力を身につけている」
私はそれを聞いて、思わずソラを見た。
ソラはただ、魔力の赤い光を見つめている。
「うわ……懐かしいな……」
ソラは言った。
「花火だ……」
家々から、町の人々が飛び出してきた。
町長が慌てた様子でソラに声をかける。
「これはなにごとじゃ! 夜空が光っておる!」
「花火ですよ」
ソラは私を見て、笑った。
「夜を彩る、火の花です。きれいですね」
「確かに……これは見応えがあるのう……」
私は夜空に見惚れるソラを見て、嬉しくなった。
「ハナビっていうのね……これなら、何発だって撃てるよ」
私はそれから、何度も何度も夜空に魔力を撃ち出した。
真昼のようなハナビが、私たちを照らした。
「やはり魔王と呼ばれるだけあって、すさまじい力じゃな、サレンどの」
「この指輪のおかげ……」
町長は、私の指に目を留めた。
「なるほど、錬金王と魔王との婚姻というわけじゃな! みなの者! 祝いの準備をするのじゃ!」
それからは、飲めや歌えの大騒ぎになった。
もちろんリュカたちも、なにごとかと屋敷から出てくる。
「なにがあったの? 夜空が爆発してるわ!」
「私のハナビよ……ソラが指輪をくれたから」
そう言うと、リュカはキッとソラを睨んだ。