「ああ。〈魔力核〉の欠片を加工したんだ」

「〈魔力核〉に錬金術は使えないんじゃなかったの?」

「うん、だから石工さんの工房で、手作業で加工した。いろいろ教えてもらいながらね」

 そういえば、ソラは食事の時間になっても食堂に顔を出さなかったし、おやすみを言った覚えもない。

 よく見れば目も赤いし、くまができている。

 ソラはあれから、ずっと工房にこもっていたのだ。

 差し出された指輪を見て、私は――。

「どうして、指のサイズがわかったの?」

 そんな、馬鹿な質問しか出てこない。

「俺は錬金術で仲間たちの服を作ったりしてるんだけど、その、なんだ。見ればいろんなサイズがわかるんだ。《鑑定》の応用みたいな感じだよ」

 照れくさそうに、ソラは言った。

「〈魔力核〉はいらないって君は言ったけれど、これは今まで君が頑張ってきた証だと思うんだ。だから、持っていて欲しいと思って……」

 そう言って、私の手首をそっと握った。

「受け取って……くれるかな?」

 胸がきゅうっと熱くなって、その熱いものがのどを詰まらせて、目頭まで昇ってくる。鼻が、ツンとする。

 私は涙を流さないように、ぐっとこらえた。

「嬉しい……本当に、それしか言えない」

 結婚って、こんな感じなのか。

 実感が湧かないようでいて、それでも胸の奥は暖かくて。

 これからは夫婦で一緒に、人間と魔物を治めていくのだ。

 それが私たちの、幸せな結婚生活。

 甘い人との、甘い誓いだ。

 私が薬指を立てると、ソラはそっと赤い指輪を通した。

 すると――。

「ソラ……」

 指が熱い。焼けるように熱い。

「どうした!?」

 その熱が、全身を巡る。体の芯から力が湧いてくる。かつて〈魔力核〉を操っていたときのような――いや、それを超えた力が私の中で漲っている。

「大丈夫か!?」

「一緒に外に出て」

 この力を試したい。

 私はソラの腕を引いて、屋敷を出た。

 そして広場に出る――外は曇り空。

 私は全身を巡る魔力を、両手に集中させた。

「なにをする気だ、サレン」

「見てて」

 両手の間に赤い魔力の塊が発生する。