「きっと、大丈夫さ」
確信なんてないけれど、どう転んでも俺たちは大丈夫だ。あの悪魔の森で生き抜いた俺たちは、どこでだって生きていける。外の世界を見て、それがよくわかった。
夜明けの道を、俺たちは歩いた。
そして町の門を潜ると――。
「錬金王様がご帰還なされたーっ!」
「魔王様も一緒だーっ!」
町の鐘が鳴り響き、朝早くから仕事に就いていた人々が、どっと押し寄せてきた。
「王様、お帰りなさいませ!」
「魔王様もご無事で!」
サレンを怖れる者は、誰ひとりとしていなかった。
「みんな、私が怖くないの……?」
麦わら帽子をぎゅっと被ったサレンが尋ねると、町長が答えた。
「錬金王に、魔物のご一行が育てた町じゃ。その中に魔王がいたところで、おかしなことなぞありゃせん」
「だ、そうだ」
俺は、サレンの麦わら帽子をそっと持ち上げた。
角があらわになっても、誰ひとり怯えるものはいない。
「あらためて、魔王サレンどの。町を代表して、心から歓迎しますじゃ!」
町長の声とともに、集まってきた町の人々が、次々と声を上げた。
「錬金王万歳! 魔王万歳!」
みんなにもみくちゃにされながら、俺は石工さんを探した。
「王様! ようこそ帰っていらっしゃいました!」
「ありがとうございます。ちょっと工房を借りていいですか?」
人混みから抜け出して、俺は石工さんの工房へと向かった。
「錬金術があれば、ウチの工房なんて使う必要ございますかね?」
「ちょっと例外がありましてね」
それから一晩、俺は工房にこもった。
* * *
部屋が、ノックされた。
「入って、いいか?」
ソラの声だ。私は鏡を見て、ぱぱっと髪型を整える。
「どうぞ!」
入ってくるなりソラは、
「実は、渡したいものがあってさ」
おずおずとポケットに手を入れた。
「これ……なんだけど」
ソラの手のひらに乗っていたのは、透明な赤い指輪だった。
「それって……」