「〈魔力核〉は魔素の効率的な操作を所持者に与える、いわば“表象する概念”だ。だから見えるし、触れるし、破壊できる。でも正確には物体ではない。だから錬金術による干渉を受けつかない……ということらしいね」
なんというか――えらく難しい話を始めた。
赤い破片のひとつを拾って、続ける。
「これは魔素によって、物体のように振る舞っているだけなんだ。だから物理的に破壊することはできても、錬金術で操作することはできない」
「物理的に破壊できる……なるほど」
それだけは、どうにか理解できるというところだ。
まだまだエルダーリッチに教わることは、山ほどありそうだ。
俺はいちばん大きな破片をひとつ拾って、ポケットに入れた。
「なにか思いついたらしいね」
そう言ったエルダーリッチに、俺は笑みを返した。
「それはそうと、あいつらがそろそろ目を覚ましたみたいだ」
「おい……もう終わったと思うなよ……」
カンジが、ゆらりと立ち上がった。
「これからが四回戦だぜ!」
そう言ってメイスを拾い上げ、床に叩きつける。
――すると、メイスがぱきんと折れた。
「へ……は……?」
カンジは、もしやという様子で、ステータスを開く。
「……ない……ない……ユニークスキルがない……ッ!!」
「そんな馬鹿なこと……」
次に立ち上がったアキラも、ステータスを開く。そして、たちまち真っ青になって膝から崩れ落ちた。
「ウソだ! 僕の【勇者】がない! ウソだ! ウソだぁああああああああ!!」
床を転がりながら、アキラは泣き叫ぶ。
見ればナナも、ステータスを見て震えていた。
「【魔女】が……私の【魔女】が……」
「どういうことだ?」
俺もステータスを開いてみる――すると。
「あれ、スキルが増えてる」
【勇者】:対象に勝利する。
【破壊神】:対象を破壊する。
【魔女】:対象を傀儡化する。
【聖女】:対象を守護する。
「みんな勇者パーティーのスキルだ。どういうことだ?」
「なるほど、面白い現象だ」
エルダーリッチが、くちもとに指を当てた。
「おそらく〈魔力核〉を《鑑定》しようとしたときに、ユニークスキルの移譲が行われたのだよ。キメラに取り込まれた〈魔力核〉の中で、スキルが魔法と等しく“概念”として循環した結果だ。“概念”を、鑑み、定める……《鑑定》することで、主体であるソラがユニークスキルを所有したわけだ。実に興味深い」