過去の友人の言葉が、脳裏に響いた。高校時代、飛び降り自殺をしようとした女子を助けたときに、そう言われた。そうか、死ぬのか。続いてよみがえるのが、死んだ親父の言葉だ。

『常に人のために身をなげうつ覚悟を持て』

古風な人だった。おかげでこのザマだ。女の子の泣き声が、妙に遠くに聞こえた。

その後のことは覚えていない。





 *  *  *





「おい如月! 如月!」

「空くん!」

ずいぶん長く空走して停止したトラック。運転手が真っ青な顔をして降りてきた。

「当たってないぞ! 当たってない!」

運転手は必死に主張した。女の子の鳴き声が響き、交通はストップしている。ふたりは必死に如月空を探す――どこにもいない。血の痕もない。

「なにがあったんだ……?」

警察が来ても、とうとう彼は見つからなかった。





 *  *  *





手のひらが埋まるほど毛足の長い、真っ赤な絨毯の上に俺は倒れていた。

「陛下……成功いたしました」

低い声が響いて、俺は顔を上げた。

海外の観光スポットを紹介する番組かなんかで、こういう場所を見たことがある気がする。

金で装飾された白い柱を照らすのは、四対の豪華なシャンデリア。天井には巨大な絵が描かれていて――。

「きょろきょろせずに、姿勢を正さんか! 王の御前である!」