「ニセモノ……オウサマ……タベテイイ……」

 ずしん、ずしん、とオークが近づいてくる。

「あは、ひゃ、あひ……」

 国王は失禁して笑い始めた。

「わしは王だ……だからこんな目に遭うはずがない……あってはならない……だから全部夢なのだ……フハハハハハ!!」

 そんな言葉を気にもかけず、オークたちは話し合っている。

「オレモ……タベル……」

「ナカヨク……ハンブンニ……ワケル……」

 オークたちは仲良さそうに、互いの棍棒を軽く叩いた。

「ソレガ……ヘイワ……」

「ハンブンニ……ワケル……ヘイワ……」

 オークは、狂ったように笑う王の肩を掴む。

 ソラの敷いた法に従って、国王は平和に“分割”された。

「オオキイホウ……ヤル……」

「オマエ……シンセツ……」


  *  *  *


 そこで、スクリーンが消えた。

 映す対象がいなくなったからだ。

「………………」

 ひどい目に遭わされたとはいえ、国王とグルーエルがあそこまで悲惨な最期を遂げると、さすがに気分が良いものではない。

 俺が魔法で気絶させるなりすれば、あの不幸は防げたのではないか――そんなことを考えていると、エルダーリッチが言った。

「甘い君のことだから念のため言っておく。責任を感じる必要はないぞ」

 そう言って、俺の目を見た。

「国王も王宮魔術師も、滅ぶべくして滅んだ。君がどれだけ大きな力を手にしても、救える者は限られている。それを忘れてはいけないよ」

「……わかった。ありがとう」

 俺は立ち上がると、倒れているサレンを抱え上げた。そう、救える者は限られている。だからこそ俺は――。

「……ソラ」

「良かった、目を覚ましてくれたな」

 周囲には、砕け散った〈魔力核〉の破片が散らばっている。崩壊した壁から、夕陽が差し込む。それを反射して、赤い破片が輝いていた。

「すまない。〈魔力核〉を壊してしまって」

 俺がそう言うと、サレンはゆっくりと首を振った。

「大事なものだったんだろう」