私は必死に耳を澄ます。

「かな……ず……ま……」

 なにか言っている。

 聞きたい。

 ソラの声を聞きたい。

 近くで――もっと近くで。

「サレン!!」

 その瞬間、はっきりとソラの声が聞こえた。

「必ず約束は守る!」

 触手を斬り払いながら、ソラは叫んだ。

 ――約束?

 私の意識は、町にあるあの屋敷へ、あの懐かしい屋敷へと戻った。

『サレンもなにかあったら俺を守ってくれよ』

 私は、ソラとそんな話をしたのだ。

『俺もサレンになにかがあれば、必ず守る』

 ソラは、言った。

『約束する』

 そのソラがいま、必死で戦っている。

 仲間たちも“私”のために“私”と戦っている。

 約束――そう、約束したのだ。

「覚えてるだろ!? サレン!」

 ソラは叫んだ。 

「俺は必ず……サレンを守る!!」

 その瞬間、ソラの声が心の奥まで貫いた。

 もやがかかっていた意識が、覚醒する。

「ソラ!!」

 自分のくぐもった声が、耳に痛い。

「サレン!!」

 ソラの声が聞こえる。

 勇者と、グルーエルと、私と、そして〈魔力核〉。

 私はこの〈魔力核〉に、どれだけ執着してきたことだろう。

 けれども、もう、いらない。

 今更ひとりで力を抱いたところで、なんになるというのだろう。

 ソラは誰よりも甘い。

 甘くてとろけてしまいそうで。

 そのくせ、あんなに強い眼をして。

 もう、いらない。

 私には――私にはソラがいる。

「待て……なにをする気だ!」

 グルーエルの声が響く。

「私は……ソラとの約束を果たすだけ……」

 私だって、約束したのだ。