キメラへと吸収された。

 子供がこねる粘土のように、キメラは不気味に蠢く。

「なにが起こったの!?」

「教えてやろう!」

 奇妙に歪んだグルーエルの声が、謁見の間を震わせた。

「これが……勇者第三形態だァーッ!!」

「ギシャアアアアアアアアアアアアア!!」

 キメラの弱点は、魔力の供給源――つまり〈魔力核〉とサレンが外部にあったことだった。しかし今では、サレンと〈魔力核〉、そしてグルーエルはキメラの一部となっている。

 奴を相手にして《鑑定》が意味を持たないのはわかっている。

 しかしその力は、目にしただけで明らかだった。

 いまや巨体はふたまわりほど大きく膨張し、無数の眼球がギョロリとこちらを睨んでいる。

 もはや勝ち目は――いや。

「勝機は、必ずどこかにあるはずだ!」

 俺は仲間たちとともに、巨大なキメラと対峙した。


  *  *  *


 意識が、ぼんやりする。

 あれほど求めていた〈魔力核〉が、こんなに近くにある。

 魔物たちを統制し、人間たちから守るための〈魔力核〉。

 勇者たちに奪われた、力の源。

 それがいま、手元にあるのだ。

 これを求めて、ずっと足掻いてきた。

 ついに、この手に――。

「魔王サレン……」

 頭の中に響くのは、グルーエルの声だ。

「勇者になった気分はどうだ?」

 あざ笑うように、言葉が続く。

「貴様を倒した、勇者になった気分は? 世界で最強の存在になった気分は?」

「どうでもいい……」

 私は言った。

「ソラに会わせて……」

「如月空か? それなら今……」

 グルーエルの笑いが、頭の中を反響する。

「我々と戦っているところだ。世界最強の我々とな」

 ぼやけた視界の中で、ソラが剣を振るっているのが見える。

「……かな……ず……」

 声が遠い。