「フハハハハ! 如月空! 必死こいて集めた魔物たちも、大して役には立たんようだなあ!」
グルーエルの高笑いが、謁見の間に響きわたる。
「ここまで醜い魔法は珍しいな……邪法も邪法だ……」
エルダーリッチが呟いた。
グルーエルは俺を睨みつける。
「なんとか言ったらどうだ? 如月空!」
「みゅ!」
“ソラ”が返事をした。
「な……!!」
グルーエルが振り返ったその先には――。
「俺はここだ」
剣を構えてグルーエルを見据えた。
「馬鹿な!? 何が……!」
なにか魔法を放とうとグルーエルは両手をこちらに向けた。
しかし今、間合いはこちらのものだ。
絨毯を蹴り、俺は一足でグルーエルに肉薄する。
――ズドォン!
背後で柱が爆発した。
がむしゃらに放たれた、グルーエルの魔法攻撃だ。
――遅い。
破壊された柱が傾ぐより速く、石くれが地に落ちるより疾く――俺が放った一閃は、グルーエルの横腹を斬り裂いた。
いったい何が起こったのか、この男にはわからなかったに違いない。
「ぐおあああああああっ!!」
「みゅ!」
元の姿に戻ったミュウが、ぽいんっと壁の後ろに飛び退いた。
【完全擬態】:対象の形態と性質を模倣する。
ミュウはこのスキルで俺に擬態し、キメラと戦っていたのだ。
「サレンを返してもらう!」
俺は再び、ミスリルの切っ先を向ける。
グルーエルは口の端から流れる血を、ローブの袖で拭った。
「これだけは避けたかったが……」
そう言って〈魔力核〉を見つめる。
「研究の成果はすべて出し切らねばならんらしい……たとえこの身と引き換えであっても……良いか如月空、貴様には、絶対に、〈魔力核〉は渡さん!」
〈魔力核〉がまばゆく輝いた。その光はグルーエルと、さらにはサレンをも包み――。
「しまった!」