「あ……れ……?」

その瞬間、警告のように赤いステータスが開いた。



――MP、ゼロ。



しまった――!

俺は目に見える戦いだけに集中してしまっていた。戦いとはリソースを削り合うことだ。体力、精神力――しかしこの世界にはMPがある。戦いの高揚感に溺れていた俺は、それを完全に失念していた。

不発に終わった俺の攻撃。その隙を見逃す相手ではない。俺はくちばしの攻撃を覚悟した。ここまでレベルを上げたのだ、一撃ぐらい食らっても、動けないということはないだろう。

しかし、もっと恐ろしいことが起こった。

ウィンドウが開く。



【暴風】



俺のスキルではない。ということは――。

「奴のスキル!?」

コカトリスが巨大な翼を大きく振ると、血液の礫とともに、真空の刃が発生して周囲を切り裂いた。木も、ツタも、岩も、

「………………ッ!!」

もちろん、狙われた俺が無事であるはずがない。

三発の刃を浴びた俺は、吹き飛ばされて、奇妙な形に切断された岩に背中から激突した。

「かはぁッ!」

肺が圧迫され、呼吸ができない。身体を動かそうとすると、全身が熱くなった。アドレナリンの麻酔作用が働いているらしい。

大きな傷は、太もも、腹、右肩――刃が動脈に達していないことを祈るしかない。

俺はステータスでHPを確認した。やはりごっそりと持っていかれている。