グルーエルに抱えられたサレンは、マイの【聖女】によって守護――つまり拘束されている。

「ソラ!!」

「待ってろよ、いま助ける」

「来ないで!!」

 サレンのそのひとことで、思わず足を止めた。

「……やはり魔王は利口だな」

 笑うグルーエルの手には、大きな赤い水晶のようなものが握られていた。

「それが〈魔力核〉!」

「ご名答だ、如月空。そして……」

 サレンの頭上には、大小のトゲが飛び出した、兜のようなものが浮かんでいる。

「とうとう私は〈魔力核〉を自在に操る装置を完成させた……魔王サレンを利用することでなァ!」

 その瞬間、兜がサレンの頭に被さった。

「きゃあああああああああああ!!」

 サレンの悲鳴とともに〈魔力核〉が赤い輝きを放つ。

「サレン!!」

「魔王は〈魔力核〉の触媒なのだ。それを手にした私に、もはや敵は存在しない。魔術の神髄を極めるのも、時間の問題だ!」

 そうしてグルーエルは、アキラたちに目をやった。

「どうやら、時間稼ぎくらいのことはできたらしいな。褒めてやろう……しかし貴様らが力を発揮するのはこれからだ!」

 その瞬間〈魔力核〉の強烈な赤い光が、アキラたちに浴びせられた。

「な……なにを……!?」

「そう怯えるな……貴様らを最強の存在へと導いてやる……勇者の名にふさわしい存在へとなァ!!」

 ぐにゃり、とアキラたちの体が歪んだ。

「な……なに……なに……!?」

「ひ……ひいいっ!」

 悲鳴を上げながら、勇者パーティーは液体のようにドロリと溶けて、謁見の間の中央に集まり始めた。それが交わり――融合し――。

 現れた者は、もはや人の姿をしていない。

「キシャアアアアアアアアアアアアア!!」

 “それ”は、もはや人間とも魔物ともつかない叫び声を上げた。

 グルーエルが高笑いする。

「見たか、錬金術師よ! これこそが、真の勇者! 真の平和の担い手!!」

 その眼は、狂気に満たされている。

「これが勇者第二形態だァーッ!!」

 グルーエルの声に重なるように、勇者四人が融合したキメラが咆哮した。

 俺は即座に《鑑定》をかける。