「国王陛下、到着したようでございます」

 振り向くと、勇者たち四人が並んでいた。

「良いか貴様ら、時間を稼ぐだけ稼ぐのだ!」

 国王が言い放つと、アキラがにやりと口角を上げた。

「時間を稼げ? 倒せと仰ってくださいよ……」

 しかしその笑顔は、ひきつっている。町で逃げ出したときに、彼我の実力差は把握しているはずだ。

「アキラ、悪いことは言わない。今すぐサレンのいる場所を案内してくれ。そうすれば、危害は加えない」

 俺はできる限り落ち着いて言った。しかしアキラは、その言葉が気に障ったらしい。憎々しげにこちらを睨みつけてきた。

「僕がお前の言うことを聞くと思うのか?」

 そう言って、剣を抜き払う。

 カンジも、巨大なメイスを握っている。

「テメエはやっぱり、いっぺんシメねえとわかんねえらしいな!」

 ナナは杖を構える。

「追放された癖に生意気なのよ」

 マイも、同じく杖を構えた。

「私は、国王陛下の命令に従うまでです……」

 戦いは避けられそうにない。

 最初に仕掛けてきたのは、カンジだった。

「オラァ!!」

 振り下ろされたメイスを避けると、刃が床に突き刺さる。

 俺は即座にカンジのユニークスキルを《鑑定》する。俺だけに見える、緑色のステータス画面が浮かび上がった。

 【破壊神】:防御力を無視して、対象を破壊する。

 つまり一撃でも、もらったらアウトだということだ。

 しかし、見切れないスピードではない。

 カンジの攻撃を避けながらナナを見ると、倒れた衛兵に向けて、杖から赤い光を放っていた。

 俺はナナにも《鑑定》を仕掛ける。

 【魔女】:対象を傀儡化する。

 何人もの衛兵が、不自然な姿勢で起きあがった。そして手のひらをこちらに向けると――。

 ――ゴバァッ!

 兵士たちの手から、マグマのように赤い火球が、こちらに向けて発射された。

 俺はミスリルの剣を抜くと、そのすべてを叩き斬った。

 背後から迫るのは、アキラの唐竹割りの一閃。俺はカンジのメイスをかわしつつ、振り向きざまにアキラの剣を弾く。

 そのとき、視界の端で動く白いものが見えた。俺は反射的にバック転で飛び退くと、目の前を布のようなものが通り過ぎた。

 マイからの攻撃だ。俺は体勢を整えながら、《鑑定》をかける。