エルダーリッチが、俺の肩を叩く。
「連中の目的は〈魔力核〉のコントロールだ。サレンは、少なくとも殺されることはないだろう。フェリスが言ったように転移魔法を使ったのなら、私が痕跡を探れる。地図を持ってこよう。ソラ、砂鉄はあるか?」
必要な道具を持って、俺たちはフェリスに案内されて現場に向かった。
エルダーリッチの水晶が、赤く輝いた。
「確かに、このあたりで間違いなさそうだ。ソラ、地図と砂鉄を貸してくれ」
そのふたつを渡すと、エルダーリッチは現在地に砂鉄を少し振りかけた。
――ズズ、ズズズズズ
砂鉄が、地図の上を移動し始めた。
「転移魔法は、亜空間と呼ばれる場を通ることで、距離を短縮する魔法だ。しかし亜空間を出入りすると、その痕跡が残る。それを探知する」
「つまりこの砂鉄は、あいつらが亜空間を通った道なんだな」
「そういうことだ」
ずいぶんと遠い。砂鉄はどんどん移動していく。
そして辿り着いたのは――。
「やっぱりか」
――国の中枢、王城だった。
かつて俺が追放された場所だ。
「場所は、これでわかった」
エルダーリッチが、俺を見た。
「あとは、君がどうしたいかだ」
「俺は……」
こぶしを握りしめた。
「サレンを救いたい。みんな、力を貸してくれ」
振り向くと、みんなが頷いた。
「みゅ!」
ミュウが跳ねる。
「なんでも任せてちょうだい!」
リュカが腰に手を立てた。
「お兄さま! 作戦立案はわたくしに!」
フウカが胸を張る。
「私もね~いろいろ頑張るよ~」
ホエルは相変わらずで。
「この事態に陥ったのは、私が警戒を怠ったからだ。その責任を取らせてくれ」
フェリスはまっすぐにこっちを見る。
俺は頷いた。
「俺たちはサレンを国王から奪還する!」
東の空が、白んでくる。
俺たちの長い影が、遠く王城へと向かって伸びた。