火花が散り、巨大なうろこが手裏剣のように宙を飛び、木に突き刺さった。



――ギェエエエエエエエエエ!



コカトリスの雄叫びが森に響き渡る。無数の切り傷から緑色の血が吹き出した。しかしコカトリスが戦意を失っている様子はない。再びくちばしを打ち込んでくる。俺の背後の巨木が爆砕する――俺はそれよりもずっと前に踏み込んでいた。

俺はコカトリスの懐に潜り込み、直角に跳ね上がる。



【豪力】ッ!



衝撃に地面が沈み込み、景色が吹き飛ぶほどのスピードでコカトリスの下腹から喉までを斬り上げた。

確かな手応え。

噴出する緑色の血に視界が塞がれないよう、俺は剣を引き抜きざま、コカトリスの喉を蹴って距離を取る。



――ギョボボボボ……ギョボボボボボボ……!



声帯を傷つけたらしい。その叫び声にかつての力強さはなかった。

やつの攻撃はくちばしによるものだ。首の動きにさえ注意しておけば、充分に対応できる。

血をまき散らしながら苦しむコカトリスの周囲を走りながら、俺は何度も【阿修羅】を叩き込んだ。

少しずつ、だが確実に体力を削っている。

「大技を、試してみるか……」

俺は、剣をかつぐように構え、右足を大きく引いた。

念じるのは、ふたつ。



【阿修羅】【豪力】ッッ!!



ふたつのスキルの重ねがけ! ぐっと大地を蹴ったその瞬間、ぐらりと身体が傾いだ。