「………………」

 正直、信じたくはない。

 町の人々との関係は、良好だったはずなのだ。

 それなのに――。

「お前たちは、サレンの誘拐に関わったのか」

 そう尋ねると、三人はおそるおそるといった様子で頷いた。

「なぜ、そんなことをした」

「聞いたんです……あの女の子は魔王だって!」

 男のひとりが言った。おそらくはグルーエルが流した噂だろう。

「そうだ、角も生えてた! あの子は魔王だ!」

「王様、あなたは騙されてたんです! 手元に魔王を置くなんて……!」

「魔王だからか……」

 俺は、こぶしを握りしめた。

「魔王だから、なんだっていうんだ。あの子が、あんたたちに、なにかしたのか?」

 三人を見下ろして、俺は続ける。

「あの子は……サレンは、あんたたちと同じように、町で生活してたんだ。広場でパンを食べて、噴水を眺めて……町が発展するのを喜んでいた」

 ひとりひとりの目を見ながら、俺は話した。

「あんたたちが魔王をどれだけ怖れているのかはわからない。けれども、サレンの様子を見ただろう? 誘拐されるとき……サレンはひとりの女の子だったはずだ、違うか?」

「それは……」

 言いよどみつつも、男たちは口を開く。

「でも魔王ですよ! 人に害をなす存在です! だから私たちは……!」

 俺は、ゆっくりと頷いた。

「同じ言葉を話し、同じ生活を営む。サレンも、あんたたちも、そういう意味では同じ性質を持っている。金槌が金槌であるのと同じだ。その材料がミスリルであれ、鉄であれ、同じものなんだ。だから……」

 俺は、わき上がってくる大きな感情をこらえて、言った。

「だから、魔王だろうと、魔物だろうと……仲間は、仲間なんだ。あんたたちと……一緒だ」

 男たちの顔が、窓からの明かりに照らされる。

 その表情は、後悔に満ちていた。

「王様、俺たちは間違っていました……取り返しのつかないことを……してしまった……!」

「俺は……広場であの子を見たことがあるんです……なのに……なのに……!」

「謝って済むことではないことはわかっています……けれどもどうか……どうか……!」

「わかってくれたら、それでもう……あんたたちは、家に帰るといい。これ以上、俺に言えることはない……」

 三人の男は、何度も頭を下げながら、闇の向こうへと消えていった。

「俺は……サレンを守るって、約束したんだよ。許されない嘘をついた」

 俺は闇の向こうを見つめながら、呟いた。

「その嘘は、まだ確定していないぞ」