「サレンだ! あいつらの目的は!」
今のサレンの力では、とても勇者たちに対抗できない。
「フェリス、勇者たちを頼む! 俺はサレンを探す!」
俺とフェリスは二手に分かれた。フェリスの実力なら、勇者四人を相手にしても遅れは取らないから心配は要らない。
「どこだ……サレン……!」
自分の部屋にはいない。そのうちに、騒ぎを聞きつけたリュカたちが、自分たちの部屋から出てきた。
「どうしたの、ソラ」
「サレンを探してくれ!」
「よくわからないけど……わかったわ!」
俺たちは屋敷中を走り回った。
そしてとうとう、見つけてしまった。
それは――テラスに残された、サレンの帽子だった。
「やられたっ……!」
俺は膝をついて、床を叩いた。
「どうなさいましたの、お兄さま?」
途中で合流したフウカに、俺は答えた。
「サレンが……勇者に誘拐された」
「なんですって!」
フウカがくちもとを押さえる。
「なるほど」
あとから歩いてきたのは、エルダーリッチだ。
「いよいよ〈魔力核〉を使う気だな」
「俺は、言ったんだ。必ず守るって……」
サレンの帽子を、抱きしめた。
「すまない……サレン……」
「ソラ……」
テラスの外から現れたのは、フェリスだった。
「勇者どもは、転移魔法で逃げられた。残りの三人は捕獲した」
そう言ってフェリスは、首筋を掴んでいた三人の男たちを、地面に転がす。
見たことがある――彼らは町の住人だった。
「ひいっ! 助けてくれっ!」
「悪気は……悪気はなかったんだ!」
「錬金王様、どうかお許しを……!」
俺は立ち上がって、三人を見下ろした。
フェリスはしばらく下くちびるを噛んでいたが、やがて小さな声で呟いた。
「裏切り者……」
「なにかの間違いよね、だってこの人たちは町の……」
リュカは戸惑いを隠さない。
「状況を受け入れるしかありませんわ。だって、その……」
続く言葉が浮かばないらしいフウカは、不安げに俺を見上げた。