「そうやって、仲間になっていくんだ」

「……わかった」

 そうして、ふたりでゆっくりお茶を愉しんだ。

 飲み終わる頃には、サレンはすっかり元気になっていた。

「ありがとう、ソラ。ティーセットは私が片づけておく」

「大丈夫か?」

「馬鹿にしないで、それくらいできる」

 サレンはフンと鼻を鳴らす。いつもの調子だ。俺は片づけをサレンに任せて、自分の部屋へと戻った。

「……遅かったな」

「うおっ」

 と、思わず声が出てしまった。

 イスで本を読みながら、待っていたのはフェリスだった。

 フェリスは本を閉じる。

「座ってくれ」

 イスはひとつきりなので、ベッドに座る。するとフェリスは立ち上がって、俺の隣に座った。

 これは――思わぬシチュエーションだ。

「屋上では、うやむやになってしまったな……」

 フェリスの吐息が、かすかに耳にかかる。

「ソラの気持ちは、わかっている……」

 そう言ってフェリスは、俺の首を触った。

 思わず、ぞくりとしてしまう。

「正直に言うと、私は嫉妬していたんだ。誰も彼もに嫉妬していた……サレンも含めて。愚かだった。食堂での言葉、ここまで聞こえていたぞ」

 フェリスは狼王だけあって、おそろしく耳がいい。

「あそこで、サレンが来なかったらどうなっていたか……」

 とん、と軽く胸を押された。不意のことで、俺はベッドに倒れ込んでしまう。起きあがろうとすると、肩をきゅっと捕まれた。甘い匂いが、霧のように降りてくる。

「それは、私も知りたい……」

 フェリスの顔が近づいてくる。目がとろんとしている。俺の心臓はバクバクと跳ねていた。フェリスもそうなのだろうか。俺はこのまま身を任せていいのだろうか――。

 回らない頭でそんなことを考えていると、フェリスの目が急に見開かれた。

「………………!」

 ベッドから跳ね起きたフェリスの手から、氷の剣が発生する。

「気配が六……いや、七つ。うち四人はあの勇者どもだ」

「………………!」

 俺も飛び起きて、剣を取った。部屋を飛び出すフェリスに、俺も続く。またあいつら――ロクなことを考えていないに違いない。

「そうだ……」

 走りながら、俺はエルダーリッチとの会話を思い返す。〈魔力核〉を操るために、王国は躍起になっている。〈魔力核〉を操るキーは――。