「あ……ああ」
急に呼ばれたので、驚いてしまった。
「箸の使い方、上手くなったな」
「ああ」
自分の部屋で、コロコロマメを箸でつまんで練習したのだ。
ソラがちゃんと見てくれているのが、すごく嬉しい。
けれど、今の私の返事も、きっと、そっけない。
サレンなら、もっと可愛らしい返事をするのだろう。
私には、愛嬌がない。
そんなことを考えているうちに、ラメンを食べ終えてしまった。ソラを見ると、スープを飲み干したところだった。
「フェリス。このあと、屋上に行こうか」
「屋根の上に出るのか?」
私が尋ねると、ソラは言った。
「大事な、話があるんだ」
やっぱりだ。
私の嫉妬芯を、ソラは見抜いている。
もちろんそれを理由に、サレンを貶めたりするつもりはない。
けれども、ソラを利用したサレンに腹を立てたことは、嫉妬の表れにしか見えないだろう。
ソラは、私を軽蔑するのだろうか。
悪魔の森に帰れと言われるかもしれない。
サレンを――新しい仲間を受け入れる器量のない者はいらない。
そう言われてもおかしくはないのだ。
「わかった……」
私はソラのあとを、トボトボとついていった。
“関係者以外立ち入り禁止”と書いてあるドアを開けると、見覚えのある黒い壁がある。
「小屋にあるのと同じ透過壁だよ、君も抜けられるようにしてある」
私はソラに続いて、透過壁を抜けた。
――びゅうっと風が吹いた。
百貨店の屋上からは、町全体が見渡せる。大きく広がった住宅街。百貨店に入りきらなかった商人のための、賑やかな市場。
その喧噪も、どこか遠くに感じた。
「フェリス……」
風に吹かれながら、ソラが真剣な表情で言った。
なにを言われるのだろう。
誰も来ないこの場所を選んだのは、きっと私に恥をかかせないためだ。
ソラはいつも優しい。
だからこそ、怖い。
言葉を待っていると、ソラは突然私に向かって頭を下げた。
「本当にすまなかった!」
突然のことで受け答えができない私に、ソラは言葉を続ける。