俺は足を止めると、ベルトに挟んだ鞘から剣を引き抜いた。ツタを切って、柄に巻く。するとかなり握りやすくなった。そして一本の太い木の前に立つ。



【阿修羅】



そう念じた瞬間、俺は足を踏み込む。そして自分でも信じられない程の速度で、木をバラバラに切り裂いた。木片が降り注ぐ中、俺は興奮で震えていた。

「これなら……これなら魔物とも、戦える!」

ずっと怯えていた魔物との、戦闘。昨日ここに飛ばされてきたときには、考えもしなかったことだ。しかし、いま俺に漲っている力を存分に振るえば、あのコカトリスだって倒せるはずだ。

そのとき。



――ズゥン。



森が揺れ、空気がビリビリと震えた。俺はこの足音を知っている。俺が必死に逃げ回り、追い詰められ、腹を割かれて殺されかけた、あいつの足音だ。俺はその方向へ駆け出した。

「俺はここだぞおおおおおおッ!!」

コカトリスが目をギョロつかせて、俺を見下ろした。

俺は剣を構える。

「リベンジマッチといこうじゃねえか……!」

コカトリスは大砲のような速度で、くちばしを俺に突き下ろした。地面が爆発し、土塊が周囲に飛び散った。もちろんそこに俺はいない。上空に飛び上がった俺は巨木を蹴り、コカトリスの首元に肉薄する。瞬間、念じた。



【阿修羅】ッ!



――ガガガガガガガガガガキィンッ!