「内装とか、細かいところは手を着けられてないので、そこはみなさんにお任せしたいと思います」

 そう言うと、彼らは笑った。

「おうよ! でないと俺たちの仕事がなくなっちまわあ!」

 それから百貨店に行って、ラーメンで腹を膨らませる。

「ごちそうさまでした」

「ぜひぜひ、またいらしてください!」

 百貨店を出て広場を通ったところで、石工さんに声をかけられた。

「町のみんなから要望があってね、広場にソラさんの石像を建てようと思うんだが、どうだろう?」

 それはさすがに恥ずかしすぎる。

「すみません、そればかりは、ちょっと勘弁してください」

「うーむ、そうですか。でも噴水の傍になにか置きたいんだよなあ。そうだ!」

 石工さんは、作業場に案内してくれた。

「これならどうです? 弟子が作ったんですが、なかなか良い出来でね」

「……それなら、いいんじゃないでしょうか」

 そうして広場の中心にどーんと鎮座することになったのは、誰でもない、ミュウの石像だった。

「みゅ? みゅ?」

 ミュウは石像の周りで、不思議そうにぴょんぴょん跳ねる。そしてスキル《完全擬態》を使って石になり、石像と睨めっこをしていた。

「………………」

 町の発展はめざましい。ラーメンをはじめとした特産品もでき始めた。法学者たちによる、新たな法の草案も上がってきている。

「ソラは、素晴らしい王ね」

 サレンが言った。

「私も魔物の王だったけれど、ここまでのことはできなかった……」

 サレンは自分のつま先を見つめて言った。

「魔物を統率し、人間に対する対抗勢力を作る。それだけを考えていた。だから恐怖を与え、逆らうものは力でねじ伏せた。私にできたのは、そこまでだ」

 うつむくサレンの帽子に、俺は手を乗せた。

「みんなの力を借りて、できることをやっただけだよ。みんなが素晴らしいんだ」

「そこがすごいところだよ」

 サレンは俺を見上げた。

「私は、部下のひとりひとりの顔を見ていなかった。誰になにができるのか、みじんも考えていなかったんだ。ソラにはそれができた。だから人も集まる。そこには恐怖も力もない。あるのはただ、お互いの信頼……」

 そう言って、少し悲しげに笑った。俺は大きな麦わら帽子ごしに、サレンの頭を撫でる。

「そろそろ、お昼にしようか」

 俺たちはベンチに座って、カレーパンを食べた。この開発にも、俺は口を出させてもらっている。サクッとした表面に、生地はモチっとしていて、中には固めに煮込んだカレー。

「美味しいね」