「商売人を上手く扱って金を循環させる国は、必ず発展します。どうぞ我々商売人をお好きに使ってやってください。ぜひとも御贔屓に、錬金術師どの」

 俺は、商人が差し出した手を握った。これからは、がむしゃらに町を整備することばかりでなく、商売や政治的なことにも心を配らなければならないだろう。

 この町を庇護下に置くと宣言したのだ。自分の言葉には、責任を持ちたい。

「お兄さま! 大工の方たちが、新たな住宅街の設計図に手を入れたいと仰ってます!」

 会議室に入ってきたフウカの言葉に、俺は頷いた。

「わかった、すぐに行くよ」

 俺は会議室に集った商売人たちを見渡した。

「みなさん、今日はありがとうございました。明日からは予定どおり、テナントに入って開店準備に入ってください」

 一同から拍手が起こる。俺は彼らに手を振りながら、会議室を出た。

 大工さんたちは、町長の家で作業を進めている。俺が下書きした設計図の、細かいところを詰めてくれているのだ。

「お待たせしました、すっかり暗くなってしまって」

「いやいやソラさん、あんたもお忙しい体でしょう。こっちもいま作業が終わったところでさあ」

 俺は大工さんから設計図の束を受け取った。俺が走り書きした住宅街が、立体図で書き起こされている。

「素晴らしいです! イメージ通りだ」

「家に沿って木を植えるってなあ、いいアイディアだ。町が涼しくなりまさあ」

「では明日、さっそく作業に入りますね」

 住宅街を造るとなると、周囲の環境も整えないといけない。

 地図によると、近くに湖があるらしい。そこから水を引けたらいいなと思って、俺は町長に相談してみた。

「いや、あそこはいかんのじゃ」

 町長は首を振った。

「あの湖は、どういうわけか塩辛い。飲み水にも畑の水やりにも使えんのじゃ。塩田を作ろうという話もあったんじゃが、ここより東には海があるからの。行商から買った方が安くつくという話になったんじゃ」

「塩湖か……」

 俺はとりあえず、その湖を見に行くことにした。なにかに使える――そんな予感があったのだ。村の外に出るときに、散歩をしていたサレンとミュウがついてきた。

「どこに行くの?」

「塩の湖だよ」

「塩が欲しいの? 行商の人がいつも売りに来てるみたいだけど」

 いつも村の中を散歩しているだけあって、サレンはいろんなことに詳しくなっている。

「ただの塩じゃないかもしれない」

 そうして三人連れだって、塩湖まで歩いていく。

 塩湖は地図通り、あまり大きいものではなかった。俺たちは、さっそく水をすくって舐めてみる。

「みゅ! シオ!」