「これは……!」
「いったいなにが……!」
「大丈夫ですよ、安全な装置です」
ドアが開くと、五階の食遊街だ。みな、あんぐりと口を開けている。この様子だと、エレベーターを操作する係を雇った方が良さそうだ。
「これがあれば、足が悪い人も自由に上の階を利用できるってわけです」
「錬金術師……噂以上の力を持っていなさる」
「ここで商売ができるのか……夢のようだ!」
俺は百貨店をひととおり案内すると、町役場に帰った。
ここからは会議室を使う。みんなの商売の種類をリストアップして、それぞれのフロアに分類する仕事がある。また、百貨店を運営するためのテナント料について話をしなければならない。
それらが終わったときには、もうすっかり日が暮れかけていた。
「お疲れさま、ソラ」
俺や疲れ切った商売人たちに、リュカはお茶を淹れてくれた。町の生活にも慣れたものだ。
「ありがとう、リュカ」
「本当に働きっぱなしね。倒れちゃダメよ」
「楽しくやらせてもらうさ」
「ソラどの」
織物商人が、俺に声をかけてきた。
「昔のここの村を知っているが、それはひどいものだった。どうしてここを発展させようと?」
「うーん」
どう答えたものか。外に出てすぐ見つかったのがこの村だった。それ以上の理由はないのだが、考えなしにやっていると思われると、甘く見られるかもしれない。
そんなふうに悩んでいると、商人は小さく呟いた。
「慧眼だ……」
商人は、お茶を飲んでにやりと笑った。
「基本的に行商はここより西を通るから、その街道沿いの村に目を付けるのが、一見賢そうに見える。しかし、ソラどのはそうしなかった」
指を組んで、続ける。
「というのも、西の街道は王都に近いという理由で国王が整備したものですからな。実際に王国の特産品は殆どが東側で作られている。だからこの町を整備し、ここを中心に領土を広げていけば、行商は確実にここを通ることになります。おまけに関税も要らないとなれば、なおさらだ」
なにやらすごい構図になっているらしい。
「この町を中心とした一帯は、大きく発展することでしょう。それと比例して、王国の街道は衰退する。そうなれば住民はソラどのに助力を求め、領土は更に広がる……まったくもって見事なお手並みと評する他ありません」
「それは……どうも」
ここに辿り着いたのは、運が良かったようだ。