ミスリルが宙に浮き、赤く輝き始める。熱気が伝わってきて、思わず俺は後ろにさがった。ミスリルは光を放ちながら、長く引き延ばされて、折りたたまれ、見えないハンマーで叩かれる。これを何度も繰り返すことで、強度が高まっていく。

やがてゴトンッと地上に落ちた銀色の塊が、薄く煙を上げる。ミスリルのインゴットの完成だ。

「さて、ここからだぞ……」

俺はミスリルのインゴットに、全神経を集中させた。剣の形を詳細に頭に思い浮かべ、スキルを発動させる。



《構築》



刃渡りが短すぎると、それだけ敵の攻撃圏内に深く入らないといけない。長すぎると、今度は狭い場所で難儀することになる。打刀の刃渡りは60センチ程度だったというから、それを参考にする。自分の刃でダメージを受けたくはないので、片刃でいこう。考えたくはないけれど、剣を持った人間を相手にすることも考えて、鍔もしっかりしたものを。柄は滑り止めを巻くことを考えた太さに。

ミスリルのインゴットが、どんどん俺の思う形へと変化していく。

「ふうっ……」

空中で、剣が鞘に収められた。俺はそれを握りしめる。これが俺の武器だ。ここで生きていくための。そして、いつか必ず脱出するための。力が漲ってくる。

「いや……これは……」

剣ができた高揚感のためだけではない、身に覚えのある感覚だ。思わずステータスを開く。



名前:如月 空

年齢:20