無数の斬撃を放つ、剣を振るうためのスキルだ。常人の目には止まらぬ速さで、刀が縦横無尽に閃いた。

 カンッ、と床で薪が跳ねる。

 俺は刀を収める――その瞬間。

 薪は二十ほどの木切れになって床にこぼれ落ちた。

 再び歓声が上がった。

「腕前も大したもんだが……剣を、剣を見せてくれ!」

 再び刀を手渡す。職人は鞘から抜いた刀の刃を、まじまじと観察した。

「……刃こぼれひとつねえ」

 職人の手から手に、刀が渡る。その誰もが息を呑んだ。

「凄まじいものを見せてもらったぜ……」

 職人のひとりがため息をついた。

 しかしそのため息は、あきらめではない。職人の目は炉の火を映して輝いていた。

「俺もこれくらいのものが造れるようになりてえもんだ」

「できることがあれば、なんでも言ってください」

「ああ、ぜひともだ!」

 いま職人たちには、クワやスキなどの農機具を造ってもらっている。

 大きなものであれば俺がひとりでやってしまえるけれど、町の人たちが使う道具をひとりで作り続けるわけにはいかない。それに、俺がいなければ回らない町になってしまうのは、目指すところではない。

 職人たちは、おしっ!っと気合いを入れて、作業に戻っていった。

 俺は剣を携えて、鍛冶場から出る。外では、サレンが待っていた。

「なにをしてたの?」

「仕事の話さ」

 そう言って、俺は鞘から少しだけ刀を抜いた。サレンは、その刃文をじっと眺めている。

「きれい……」

「こんなものは、使わないに越したことはないんだけど」

 俺はサレンの目を見た。

「君が本当に必要だと思ったとき、これが力になるかもしれない」

 《鑑定》でサレンのステータスを見たとき、刀を扱えるだけの器用さは備えていた。王国に追われている身だ、もしもということがある。

「くれるの……?」

「ああ」

 俺は刀を鞘に収めて、サレンに手渡した。

「滅多に抜くんじゃないぞ」

「……うん、わかった」

 鞘を抱きしめて、大きな帽子が頷いた。

「ソラ!」

 振り返ると、リュカが立っている。

「商人たちが、馬車を並べて来てるわ。いま町長さんと話してるけど、ソラにも会いたいって」

「わかった、すぐに行くよ」