「そうだ。あんた、素晴らしい剣を持ってるらしいじゃねえか。少しその、見せちゃくれねえか? 職人としちゃあ、気になるんだ」
「ええ、かまいませんよ」
俺は剣を抜いて、作業台に置いた。
職人たちがぞろぞろと集まってくる。ひとりが、小さな指先ほどの木切れを、そっと刃に当てた。木切れはするりとふたつに分かれた。
「凄まじい切れ味だ。材料は?」
「ミスリルです」
職人たちがざわめく。
「ミスリルほど使いづらい金属はねえ」
ひとりが言った。
「普通は削り出しで加工するんだが、それじゃこのサイズの剣は造れねえ。どんな炉を使えば、ミスリルを叩けるんだ?」
「炉は使わないんです、すべて錬金術で」
「それを、見せちゃあもらえねえか?」
「もちろん、大丈夫ですよ」
職人から、鉄鉱石とコークスが渡される。錬金術の本領発揮だ。
《融解》
赤黒い鉄鉱石がどろりと溶けだして、宙に浮かぶ。作業台には、砂塵がぱらぱらと残っている。
「この時点で不純物はある程度除去できていますが、まだ完全ではありませんし、このままじゃ加工できない酸化鉄です……というのは、みなさんに改めて言うことではないですね。なので……」
俺はコークスの上に手を掲げた。
《融解》
コークスもどろりと溶けて、宙に浮かぶ。俺は空中のふたつの塊に念じて、それを混ぜ合わせた。
「ご存じの通り、ミスリルは酸化しませんから、そこの剣を造ったときには、この工程はありませんでした」
《還元》
酸化鉄とコークスの混合物が輝き始め、酸素がコークスへと付着していく。
「ミスリルを加工した際は《酸化》によって不純物を分離していました。練度の低かった当時は、その工程を経ないと《精錬》を使えなかったんです。でも今なら、この状態で不純物を除去できます」
《精錬》
鉄とコークスが分離すると同時に、不純物も剥がれ落ちる。俺は完全に《精錬》が行われるまでに、スキルの効果を止める。
「鉄の場合は、完全な《精錬》を行うと硬度が落ちるので、若干の炭素を残しています。そして、ここから中の気体を取り除きます」
《鍛造》