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町は凄まじい勢いで発展していた。建築物の質もなかなかのものだと思うし、農地改良もかなりうまくいっている。公共空間も充実させた。
その噂を聞きつけた学者やら、腕利きの職人やらが、どんどんやってくる。
「それだけ立派な町になったってことだな」
自分の手がけた町の発展に、俺は心から嬉しくなる。
「それだけではないぞ」
エルダーリッチが言った。
「彼らがこの町に来たということは、もともと彼らがいた場所の為政者より、この町の政治が優れていることの証左でもある。もっともこの町を治めているのは町長だが」
「いやいや、わしはなにもしとらんですじゃ。フェリスどのを中心とした見回りもありますゆえ、これだけ人が集まっても治安が保てておる。すべてソラどののおかげじゃ」
「フェリスとミュウは治安を、リュカとフウカは陳情の聞き入れと管理、ホエルは子供たちの面倒を見てる。なかなかうまく回ってるな。ありがたいよ」
俺はみんなが働きやすくなるよう、大きめの建物を造った。一階にはリュカとフウカが町の人々を手助けしたり、困ったことリストを管理する町役場がある。
「わかったわ、ポロポロモロコシの作付面積がもう少し必要なのね」
「その件はお兄さまに伺ってみますわ!」
二階は、フェリスとミュウが率いる警備隊の本部だ。
「重要なのは眼と耳と鼻を働かせることだ。何かあったら、すぐに知らせろ」
「みゅ!」
学者たちが集まったのはチャンスだと思って、子供たちを教える学校も造った。教師兼校長はホエルだ。
ホエルはぽやんとして見えるけれど、知識の習得速度は目覚ましく、あっという間にみんなに好かれる良い先生になった。
「本が読めるようになるとね~楽しいよ~」
人口はどんどん増えていく。やはりいちばん多いのは、むちゃくちゃな労役から逃げてくる人々だ。国王や貴族の領地を脱出するのは重罪らしいが、俺が関わっている領地に来た人を、強制送還したりはしない。これは国王を敵に回すことかもしれないけれど、人々を守るには大事なことだ。
人が集まれば、当然諍いも起きる。法学者が何人か来てくれて、彼らは日夜、新たな法の起草のために議論を重ねていた。
国王の法に不満を持って身を寄せてきた学者たちだ、きっと優れた法を作り出してくれることだろう。
やはり、聞けば聞くほど国王の統治には問題がある。労役の重さそのものにも問題があるが、いちばん良くないのは適材適所を知らないことだ。
農業の知恵を持った人間は、畑の管理を。読み書きが得意な人間は、事務方をお願いする。