俺が一歩前に進み出ると、勇者一行は身を震わせた。
俺は手のひらを、あいつらに向ける。
「続きをやるか?」
「なんでよ……なんでクソザコのあいつが……」
魔女ナナは悪態を吐き、聖女マイはただただ青ざめている。破壊神カンジは、地面に唾を吐いた。
「ふざけんなよ……行こうぜ……」
連中はゆっくりと後ずさり、門の向こうへと引き返していく。
俺としては、別に追い打ちする理由もない。村の人々に声をかけた。
「みなさん、無事ですか?」
「ああ、無事じゃ、無事じゃとも!」
武装させられていた若い男たちと、村にいた人々は、抱き合って喜んでいた。
「帰ったよ、父さん!」
「よくぞ、帰ってきてくれた! すべてはソラどののおかげじゃ!」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
若者が、村を襲うような羽目にならなくて、本当に良かった。
「サレン、怖くなかったか?」
俺の後ろに隠れていたサレン。その肩を、俺はぽんと叩く。大きな帽子が、こくりと頷いた。
「うん……大丈夫」
「《門》をあれほどの規模で展開できるとは……君はまったく末恐ろしいな」
俺はエルダーリッチに、笑みを返す。
「良い師匠がついてるからだよ」
「また君はそういうことを」
「ソラにも、怒ることがあるのね」
サレンの言葉は、少し意外だった。
「そりゃ、あんなの見れば誰だって腹が立つさ」
「怖いお顔をしておられましたわよ、お兄さま!」
フウカもそんなことを言う。
「でも、なんだか頼もしくって、レア顔ゲット感もあって、終わり良ければすべてよし! ですわ!」
「確かに俺、あんまり怒ることないかもなあ」
「そういう者こそ、怒らせるといちばん怖ろしい」
フェリスは珍しく笑みを浮かべた。
「頼もしいぞ、ソラ」
俺はなんと返したらいいかわからなくて、後ろ頭を掻いた。
* * *