ダストン男爵は、背中から《門》に吸い込まれた。
「……消したの?」
俺はサレンに答える。
「そんなことは、しないさ」
次の瞬間、村の中に《門》が展開、兵士――村の若者が次々と現れた。不思議そうな顔であたりを見渡す彼らの中心に、最後に現れたのは。
「おおおおお!?」
ダストン男爵だった。
「なにが起こった? なにが起こったぁああああ!?」
「なにが起こったかはわからなくても」
俺は男爵に言い放った。
「どういう状況かはわかるよな?」
無理矢理兵士にされた若者たちは、怒りに燃える目でダストン男爵を睨みつけている。
「よくも俺たちの村を襲わせてくれたな……」
「俺たちの家族を……」
ダストン男爵は、その場で腰を抜かした。若者たちはダストン男爵に向かって歩みを進める。
「落ち着け! 話せばわかる! 待て! 待て! ああああああああああ!!」
結局ダストン男爵は、豪奢な上っ張りもなにもかもはぎ取られ、素っ裸で村を逃げ出した。
「撤退ィ! 撤退ィイイイイイイ!!」
遁走するダストン男爵に、地面に叩きつけられた兵士たちが、よろよろと続く。馬はとうに、森の奥に消えていた。
「まだ片づいたわけじゃないぞ」
フェリスが言った。
「わかってる」
村の東門の方を見ると、勇者の一行が立っていた。若者たちを炎で脅していたナナも合流している。
俺はとっさにサレンを背に隠した。サレンは兵士に追われていたのだ。あいつらと因縁がないとも限らない。
「久しぶりだな」
俺が睨むと、勇者アキラは頬をひくつかせた。
「どうやって、そのスライムを手懐けた……? 兵士が浮いたり……壁に吸い込まれたり……」
「あれをミュウがやったと思ってるの?」
リュカが言った。
「ぜんぶ、ソラの力よ」
「ウソだろ……」
破壊神カンジが、絶望的な声を上げた。
「錬金術は外れスキルじゃなかったのかよ……外れだからこいつは悪魔の森に追放されて……」
「そうだな、追放された。そして、戻ってきた」