「ほら行け! 突撃だ! 行け!」
再び炎が、兵士の背を炙るかのように吹き上がる。兵士たちはダストン男爵に従って、突撃する他はなかった。自分の生まれ故郷の村に向かって――。
* * *
連れ去られていた村の人たちが、槍を構えて必死で走ってくる。なにがあったのかは、ミュウの《遠隔透視魔法》ですべて見ていた。
「怒ってるの、ソラ?」
サレンが俺の袖を引いた。
「君は、心配しなくて大丈夫だよ」
笑顔は、作れなかった。
自分の親や家族たちを、無理矢理襲わせようというのだ。
ここまでの手を使ってくるとは思わなかった。
ホエルも、力を使うのをためらっているようだ。らしくない不安げな目を、俺に向けてくる。
「どうしよう~」
「……任せてくれ」
俺は両手を前に掲げ、魔力を集中させた。今まで使ってきた魔法の中で、最大の魔力だ。
「必ず、後悔させる」
俺の手に拡がる紫色の光が、大きく膨れ始める。俺は大規模な魔力のコントロールに、神経を集中させた。
「どうするの?」
サレンの声に、俺は答えた。
「罪を、償ってもらう」
俺は魔力の塊に向けて、強く念じた。
すると突撃してくる兵士たちの前に、視界が真っ暗になるくらいの、巨大な黒い壁が展開する。
「これは……!」
エルダーリッチが驚きの声を上げた。
「これが《門》だというのか……!?」
超越魔法《門》――それをくぐった者は、術者が設定した任意の場所に移動する。
「うお!」
「あああ!」
背中から炎が襲いかかってくる兵士たちは、次々と《門》に吸い込まれていく。
「次はなんだ!? なんなんだ!?」
ダストン男爵の叫びが聞こえた。ゆっくりと後ずさるのが、ミュウの《遠隔透視魔法》のスクリーンに映し出されている。
俺はダストン男爵の背後にも《門》を展開した。
「おい! 早くあれをなんとか! うおおおお!」