「子供たちも可愛いけど~ソラも可愛いよ~」

 俺のことをぎゅーっと抱きしめる。それから、

「たかいたか~い」

 ――ギュワンッッ!

 一瞬視界がブラックアウトしたかと思うと、俺は村の遥か上空にいた。

「へ?」

 地上まで目測三百メートル――あれ、これ死ぬのでは?

 重力に従って自由落下が始まる。どんどん村が大きくなっていく。

「マジで死ぬ! マジで死ぬ! マジで死ぬッッ!!」

「……よおいしょっと」

 そんな俺の体を、ホエルはふわっと両手で受け止めた。ホエルのスキル、重力を操る《天衣無縫》だ。

「どう~? 楽しかった~?」

「怖かったよ!」

 ホエルにお姫様抱っこされたまま、俺は抗議した。

「まさか村の子供にもそんなことやってるんじゃないだろうな?」

「やらないよ~これはソラだけの特別サービス~」

「えー、ホエルのお姉ちゃん、僕もあれやって欲しい!」

 俺は目をキラキラさせている子供を宥めた。

「やめておこうね、マジで危ないから」

「そうだね~危ないよね~」

 危ないと自覚していて、なぜやるのか。それはともかく。

「そろそろ、下ろしてくれると嬉しいんだけど……」

「ええ~抱っこ嫌いなの~」

「恥ずかしいの!」

 ホエルは名残惜しそうにしていたが、なんとか下ろしてもらえた。まあともかく、子供に好かれているのは良いことだ。

 村長の家に向かうと、リュカが軒先にテーブルを出して、イスに座っていた。その前には、村の人々の列ができている。

「ソラどのの作ってくれた肥料じゃが、一カ所にまとめておくと、距離がのう。わしの畑は村の端にあるもんじゃて……」

「わかったわ、分けて管理できないか相談してみる」

 俺が作って渡したノートと鉛筆を使って、陳情を書き出している。

「隣のババアが、わしの畑まで種を植えよるんじゃ!」

「バカを言うんじゃないよ! あそこはずっとあたしが使ってたのよ!」

「縄張りは重要な問題だわ。私が行くから、詳しく話を聞かせてちょうだい。あとはフウカ、お願い」

「承知しましたわ、いってらっしゃいまし! 次の方、どうぞ!」

 悪魔の森でそうしていたように、リュカとフウカは良い調停役になっているようだ。

 一方でフェリスは――。

「………………」

 村に新しく作った監視棟の上で、じっと遠くを窺っている。